離婚を専門に扱う某法務事務所に勤める1児のシングルマザーが、離婚に関する役立つ知識を発信します。
こんにちは、まいみらいです。
離婚を考えた際の大きな悩みのひとつは、離婚後の生活についてだと思います。
たとえば次の様な悩みを持つ方は多いでしょう。
「離婚後の生活費はどれくらいあればやっていけるだろうか?」
「離婚後の生活費はどうやって得ればいいだろうか」
「離婚後は厳しくなるのは間違いないから、出費を抑える方法はないだろうか」
この様な悩みは、子供を引き取り、かつ専業主婦、働いても短時間のパート勤務の方なら特に強く感じるでしょう。
ここでは、その離婚後の生活費をテーマに取り上げたいと思います。
実際のシングルマザーがどれくらいの生活費で過ごしているのか?や離婚後の生活費を確保する方法などについてお伝えします。
まずはシングルマザーの収入についてお伝えします。
国が母子家庭の収入について調査した統計がありました。
勤労者世帯で母子世帯の1世帯あたりの1か月の平均月収は次の通りです。
平均実収入:215,458円
可処分所得:189,520円
消費支出 :190,464円
※平成26年全国消費実態調査における「母子世帯の収支状況(母親と18歳未満の未婚の子供世帯)」総務省より
平均実収入215,458円の内訳は勤務収入が181,869円+公的扶助などその他収入33,589円です。
可処分所得とは、総支給から税金や保険料などを差し引かれた額、つまり実際に自由に使える額です。
消費支出とは文字通りで1か月に掛かる生活費です。
よって、可処分所得189,520円から消費支出190,464円を引くとマイナス944円で赤字です。
とはいえ、平均額なのでマイナスとなりますが、実際は収入内でギリギリ収めていることが予想できます。
シングルマザーの「生活費の内訳」が先ほどと同じ統計で公表されています。
その内訳の統計データを基に、先ほどの可処分所得189,520円を当てはめると、下記の表の金額となります。
項目 |
割合(統計) |
金額(約) |
食費 | 24.5% |
46,432円 |
住居費 | 14.4% |
27,291円 |
光熱・水道費 | 7.8% | 14,783円 |
交通・通信費 | 15.4% |
29,186円 |
教育費 | 7.3% | 13,835円 |
教養・娯楽費 | 8.2% | 15,541円 |
その他支出 | 12.7% | 24,069円 |
家具・家具用品 被服及び履物 保険医療 |
9.7% | 18,383円 |
多くの方が婚姻中の金額と比べて、大幅にダウンすると予想できるので、厳しいなというのが率直な感想ではないでしょうか。
この表の食費額46,432円を月30日で割ると1日当たり約1548円で、母親と子供2人の計3人の場合、ひとり一食当たりを172円で賄わないといけません。
ここまでシングルマザーの平均月収入や各支出額などについてお伝えしましたが、正直ギリギリで厳しいのが現実です。
ですので、離婚時に夫に請求できる権利があるものはしっかりと請求し、そのお金はいざという時の場合に備えて貯金しておきましょう。
離婚時に請求できるお金は主に次の通りです。
それでは個別にお伝えします。
未成年の子供の養育にかかる費用です。
親権や子供を引き取るかどうかにかかわらず、親は養育費の支払う義務があります。
ですので離婚後離れて暮らす父親には、養育費を請求することが出来ます。
ただし、額については法律に明記されていないので、夫婦間の協議や調停などで決められることになります。
その際によく参考にされるのが「養育費算定表」から算出される額です。
養育費算定表から算出される額の例としては、
子を引き取る母親の年収:100万円
義務者である父親の年収:400万円
子供人数:1名(0~14歳未満)
このケースで算出される月額は約42,900円です
※養育費についての詳細は「養育費の相場と養育費不払いを防ぐ最善の方法を知っていますか?」をご覧ください。
財産分与とは、離婚に際して、夫婦が築いてきた財産を、夫名義・妻名義にかかわらず分け合うことです。
この後お伝えする慰謝料と違って、離婚原因とは分けて考えられます。
よって、仮に不貞行為(不倫)を行っていたとしても、財産分与を受ける権利があります。
対象となる財産は原則「婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産」であり、婚姻前の各々の財産や別居後の財産などは対象外です。
分与割合は基本的に2分の1ずつです。
それは妻が専業主婦であったとしてもです。
専業主婦でも50%となる理由は、父親が仕事に専念できるのも、母親が家事や子育てを一手に引き受けているから、財産構築の貢献度は同じである、といった考えからです。
財産分与の一例を出すと、婚姻宙に貯まった預貯金が400万円あるとすれば、夫200万円、妻200万円ずつ分けることになります。
※財産分与の詳細については「離婚時の財産分与の対策はこれを読んでガッチリ確保」をご覧ください。
離婚となった理由が、夫婦の一方の有責行為による場合、他方の配偶者は自分の受けた精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できます。
有責行為とは主には次の通りです。
離婚理由で一番多い「性格の不一致」は、有責行為ではない為、慰謝料を請求する事は出来ません。
なお慰謝料の代表格である不倫の慰謝料の相場は200万円から300万円です。
※慰謝料についての詳細は「離婚の慰謝料の相場と相場以上の額を獲得する為に知っておくべきこと」をご覧ください。
結婚や子供を生まれたこと機に専業主婦になった妻は、離婚することで生活費を得る収入源を失います。
仕事のブランクもある為、早期就職や正社員と同じような給与待遇を受けるのは困難な為、離婚後しばらくは経済的に苦しくなります。
この様な場合に、妻の経済状況が安定するまでの間、夫が妻を扶養して生活をサポートしなければならない、という法の考え方があります。
これを「扶養的財産分与」と言われます。
よって、離婚後の生活費を夫に請求する事は可能です。
しかし判例等は、財産分与や慰謝料を受けてもなお、当面の生活が出来ないという状況が必要なので、かなり限定的です。
また夫自身に離婚後の妻を養える経済力がない場合や、実家などに頼れる場合は対象外です。
以上のことから、離婚後の生活費を請求するのは困難だと言えます。
しかし、夫が離婚後も生活費を払うことを約束してくれるなら問題ありません。
ですので、夫にある程度の理解があるのなら「離婚後1年間」などの期限付きで、一度ダメもとでお願いしてみてもいいでしょう。
養育費や財産分与、慰謝料は離婚後でも請求することができます。
養育費は子供が自立するまでの間はいつでも相手に請求できます。
財産分与は離婚後してから2年間、慰謝料は離婚後3年間を経過するまでは、請求することが出来ます。
しかし、後になればなるほど事態は複雑化しますので、離婚前にするのが原則です。
※養育費の時効の詳細については「養育費は時効だ!と主張されたら、この記事で対策して下さい」をご覧ください。
先ほどお伝えした養育費や財産分与、慰謝料等の約束を夫から取り付けたものの、実際に払ってもらわないと意味がありません。
これらのお金を受け取れないことは、離婚後の生活が困窮することを意味します。
特に養育費は長年に渡り、受け取るものですから、しっかりと不払い対策をしないと途中で受け取れなくなる可能性が高くなります。
口約束では高確率で反故されるので絶対にいけません。
実際に継続的に養育費を受け取れている家庭は2割にも満たないのが現状です。
そこで養育費や財産分与などの離婚に関する取り決めは、証拠を残す為に必ず書面化にしなければなりません。。
この離婚に関する取り決めを残す書面を「離婚協議書」といいます。
離婚後のお金に関する事や、子供のことに関する取り決めを書面に文章化して、日付を入れ夫婦の署名押印をすれば、その書面は法的効力を持ちます。
必ず離婚届の提出前にこの離婚協議書を作成する必要があります。
なぜなら、離婚した後では養育費などを払う側の夫が、証拠に残るのを嫌がり、作成を拒否する。
あるいは、約束自体を反故する恐れがあるからです。
出来る限り、この離婚協議書は公正証書化にすることをお勧めします。
公正証書とは、公証人法によって、法務大臣に任命された「公証人」が、法的に問題がないと公に認証してくれた契約書のことです。
公正証書化にしていない離婚協議書でも、要件がしっかり具備されていれば、裁判で通用する証拠になるのは間違いありません。
しかし養育費などの不払いが実際にあっても、強制執行できないのが弱点です。
強制執行するには、離婚協議書を元に裁判をして判決を貰う必要があり、裁判が終わるまで強制執行が出来ないのです。
そこで離婚協議書を公正証書化し、さらに「強制執行認諾付き約款」を盛り込めば、相手が養育費などの金銭不払いがあった時は、
裁判で判決を得なくても、相手の給与などの財産を差し押さえ、不払い分を回収することが出来るのです。
養育費を受け取る側とすれば、離婚後の生活を安心して過ごす為にも、ぜひ公正証書で離婚協議書を作成しましょう。
なお離婚協議書を公正証書化にしたものを「離婚公正証書」と呼ぶことが多いですが、正式には「離婚給付契約公正証書」です。
※離婚公正証書についての詳細は「離婚協議書を公正証書にすることで効力は絶大となります」をご覧ください。
お伝えした通り、シングルマザーの収入は決して多いものではなく、生活費を切り詰める生活を送ることが必要になります。
たとえ養育費や財産分与を確保できたとしても、子供は進学するにつれ大きなお金が必要ですので、それらは貯蓄する方が望ましいです。
そこで少しでも生活が楽になるように、国や自治体が行っている母子(父子)家庭向けの手当てや支援制度などを積極的に利用しましょう。
主な母子(父子)家庭向けの手当てや支援制度は次の通りです。
それでは個別にお伝えします。
児童扶養手当(母子手当とも呼ばれる)とは、国の支援制度です。
対象は離婚や死別によって、ひとり親になった母子家庭及び父子家庭を対象に、各自治体から支給される手当です。
支給対象者は0歳から18歳に到達した最初の3月31日までの間の子供です。
親の収入により支給額は変わりますが、児童が一人のケースでの月の全額支給額は42,290円です。(平成29年現在)
支給時期は4月、8月、12月の年3回です。
なお児童扶養手当を受けるには、住所地の役場で申請が必要となり、支給が決定されても毎年「現状届」を提出しなければなりません。
なお離婚後は実家に戻り、両親と一緒に暮らす場合は、世帯全体の所得が審査対象となります。
ですので、所得制限により、支給されない可能性が非常に高くなるので留意ください。
※児童扶養手当の詳細は「児童扶養手当の申請で絶対に押さえるべき事と養育費との関連性」をご覧ください。
児童手当は、ひとり親世帯だけではなく、国内に住所がある0歳から中学校卒業までの児童を養育している父母などに、国から支給される手当です。
児童の年齢、対象児童の人数、所得によって金額が変わってきますが、0歳から3歳児未満は最高で月額15,000円が支給されます。
3歳から12歳(小学校卒業)は第一子と二子は最高で月額1万円で、第三子以降は最高で月額15,000円が支給されます。
中学生は月額一律10,000円です。
支給時期は6月、10月、2月の年3回です。
児童扶養手当同様に、、住所地の役場で申請が必要となり、支給が決定されても毎年「現状届」を提出しなければなりません。
児童手当は、児童扶養手当の支給を受けていても支給される為、両方合わせると最高で月額で約57,000円受けられます。
なお児童扶養手当は生活費に充てられるが、児童手当は進学などに備えて貯蓄に回す家庭が多いようです。
各地方自治体によっては、独自のひとり親家庭に対しての支援制度を設けている場合があります。
代表的な例として、東京都では「児童育成手当」があります。
都内に住所にある0歳から18歳になった最初の3月31日までの児童に対して、児童一人につき月額13,500円が支給されます。
ひとり親家庭を対象に、世帯の保護者や子供が医療機関で受診した際の健康保険自己負担分を住所地の地方自治体が助成する制度です。
子供だけではなく”親”も助成対象になっているのが特徴です。
所得制限が設けられていますので、その額を超えると利用できません。
助成内容は各自治体によって違うので、住所地の制度をチェックしましょう。
助成が受けられるのは0歳から18歳に達して最初の3月31日までの間の年齢の子供と、その期間中の保護者です。
ひとり親家庭住宅手当とは、未成年の子供を養育し、賃貸物件に住んでいるひとり親を対象に、家賃補助を行っています。
この助成制度の実施の有無は各自治体によりますので、自身の住所地の市町村が実施しているかをチェックしてください。
家賃補助の例:東京都武蔵野市では月額10,000円、神奈川県鎌倉市は月額上限8,000円。
各自治体が定める所得制限があります。
ひとり親家庭高等職業訓練給付金とは、資格取得のための職業訓練を受けながらも、
その資格取得の勉強する期間月額10万円の給付金として支給される制度です。(上限3年間)
資格取得の勉強をしながらも給付金が受けられるという、大変ありがたい制度ですが、条件も厳しいです。
まずは給付金を受けられる資格は次の通りです。
多くの講座は半年以上の期間です。
職業訓練は原則的に、土日以外は毎日9時から18時まで受講しないといけません。
私用の休みや遅刻早退は厳禁です。
しかしこれらの資格取得(特に介護関係)ができれば、専業主婦の期間が長かったとしても、正社員の職に就きやすくなります。
子供が小さい場合は、なかなか職業訓練を受けるのは難しいかもしれません。
でも実家が近くで子供を預かってもらえる環境の方や、子供に家の留守を任せても大丈夫な年齢なら、ぜひお勧めです。
なお地域や学校によっては、WEBなどの通信制度もあるようなので、受講は難しいかもと思う方も一度チェックしてみてください。
今回は離婚後の生活費をテーマとして取り上げました。
ご覧頂いた通り、シングルマザーの経済状況は決して恵まれているものではありません。
ですので、養育費や財産分与など離婚時に請求できる権利はしっかりと行使しましょう。
そして実際に合意出来た場合は、出来る限り離婚公正証書に残しましょう。
絶対に口約束だけではいけません。
また生活を安定させる為にも、児童扶養手当などをはじめとする母子家庭の支援制度は必ず申請するようにしましょう。
それでは最後までご覧頂きありがとうございました。
まいみらいがお伝えしました。(私の離婚経緯などを載せたプロフィールはこちら)
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