離婚を専門に扱う某法務事務所に勤める1児のシングルマザーが、離婚に関する役立つ知識を発信します。
こんにちは、まいみらいです。
財産分与という言葉は聞いたことはあるが、詳しいことまでを知っている方は恐らく少ないですよね。
慰謝料は相手に有責な行為が無ければ請求できませんが、財産分与は離婚すれば基本的に請求できる権利です。
確実に分与を確保する為には財産分与の全体像を知り、損をしない為の対策をすることが必要。
そこで今回は財産分与の全容と、確実に分与を確保する為のポイントを取り上げます。
全体像やポイントを把握することで、財産分与の制度がイメージし易くなる結果、正当な分与を受ける為の対策となります。
私も離婚前に、しっかりと財産分与に関することを押さえたので、しっかりと確保することが出来ました。
スポンサーリンク
財産分与とは、離婚した一方が相手側に対して、財産の分与を請求出来る権利であり、婚姻中に取得した財産を離婚に際して清算し、お互いの寄与度に応じて分配する制度です。
婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産であれば、離婚原因をつくった有責配偶者であっても、財産分与を受ける権利があります。
ここでよく不安として出るのが、専業主婦は財産分与を受ける権利があるのか?についてです。
専業主婦の家庭では、夫が働きに出て収入を夫の名義で得ることになります。
妻は家事育児に関することを主にするので収入がありません。
この場合、収入を得ることがなかった専業主婦は、財産形成の協力が無かったことになるのでしょうか?
財産形成における夫婦の協力とは、何も収入だけを指している訳ではないのです。
夫が収入を得ることが出来るのは、妻が家事や育児をして家庭を守っているからこそです。
妻の協力無しでは、安心して仕事に集中ができません。
つまり財産蓄積は、妻の寄与・貢献がなくては出来るものではないのです。
ですので、妻の内助の功も夫婦の協力として認められ、専業主婦だとしても分与を請求する権利は当然にあります。
財産分与には、婚姻中の夫婦の財産の清算、離婚後の扶養、離婚による精神的苦痛に対する慰謝料の要素があります。
上記の趣旨を踏まえ、財産分与は次の4つのものに分類することが出来ます。
それでは個別に見てみましょう。
清算的財産分与は財産分与の中心になるものです。
婚姻中に夫婦が協力して築いた共有財産は、
それがどちらの名義になっていたとしても、それぞれの財産形成についての貢献度・寄与度を考慮し、公平に分配する必要があります。
分与の対象になる財産は、結婚中に夫婦の協力によって得た財産で、次の2つに分かれます。
「共有財産」とは、名実ともに夫婦の共有になっている財産のことをいいます。
一方「実質的共有財産」とは、名義は夫婦のどちらかの一方になっているが、夫婦が協力して取得した財産のことをいいます。
次のような財産は基本的に財産分与の対象にはなりません。
これらは、夫婦それぞれに所有権がある「特有財産」とされます。
しかし財産分与を請求する者が、その特有財産の減少防止に協力したのであれば、その一部について分与を認める判例もあります。
本来は慰謝料と財産分与は別ものです。
しかし、慰謝料の取り決めがない時など、慰謝料を含めた財産分与を行うこともあります
その分与額が低額であり、損害賠償=慰謝料の要素を含めた趣旨と認められず、精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときは別途、慰謝料を請求することは可能です。
もっとも、離婚協議書などに「包括的清算条項」を入れていた場合は、原則請求は出来ません。
包括清算条項とは、離婚協議書などに記載をした財産分与、慰謝料など以外には、一切何も請求しません、といった意味の条項です。
※慰謝料についての詳細は「離婚の慰謝料の相場と相場以上の額を獲得する為に知っておくべきこと」で取り上げています
長年に渡り専業主婦であった妻は、離婚によって生活費の収入源を失ってしまいます。
加えて、早期の就職が難しい為、離婚から短期間で経済的な面は安定しません。
このような場合に、妻が安定的な収入が得られ、自分自身で生活出来るようになるまでの間、夫が妻を扶養して生活を保障しなければならないとの考え方があります。
それを具体化させたのが、扶養的財産分与です。
扶養的財産分与の額は、次のようなことを考慮して判断されます。
裁判例のほとんどが、妻の再婚や死亡までの生活保障をしたものではありません。
あくまで妻が安定した収入を得るまでの間の一時的な給付です。
また妻に収入源がなく、経済的に不安定であっても、次のような場合は扶養的財産分与の対象外です。
そして扶養的財産分与は、あくまで補充的な財産分与となります。
清算的財産分与や慰謝料的財産分与を受けてもなお、当面の生活費に困る場合でないと給付されません。
なお、扶養的財産分与は金銭で扶養するのが原則です。
例外的に夫の特有財産たる土地に使用貸借権、建物に賃借権の設定を命じた判例もあります。
夫婦の一方が無収入や低収入の時は、同居、別居に関係なく、お互いが同等の生活が出来るように費用を分担する扶養義務があります。
そこで、別居期間中などで相手から生活費をもらえなかった期間があれば、その分の生活費を財産分与で調整することがあります。
これを婚姻費用清算の財産分与といいます。
お伝えした通り、婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産であれば、名義がどちらの物であれ、夫婦の共有財産となるのが基本概念です。
その主な共有財産(実質的共有財産)は次のようなものがあります。
それでは個別に見てみましょう。
金額が明らかなので、お互いに分与割合を決めれば問題はありません。
ただし婚姻中に蓄えた現金、預貯金だけが対象になるので注意が必要です。
結婚前の現金や預貯金は特有財産なので、原則分与の対象にはなりません。
土地や建物の不動産については鑑定費用が必要になりますが、不動産鑑定士に鑑定してもらえば正確な評価がでます。
他の評価方法としては、路線価、公示価格、不動産業者などに聞くなどすれば、客観的な目安になります。
分与方法としては次の二つの方法が通常です。
なお、分与割合に応じて土地・建物を共有する方法も考えられます。
しかし、離婚する二人が不動産を共有するというのは、あまり現実的ではありません。
株式や国債などの有価証券も財産分与の対象となります。
現金や預貯金がその額面通りの財産であるのに対し、株式などの有価証券は変動する為、どの時点の評価額で分与が行うかで、大きく違ってくる場合があります。
評価基準時については後ほどお伝えします。
夫婦の長年の協力による共有財産として分与の対象になります。
しかし、なかには定年退職はまだまだ先の話というケースもあるでしょう。
その場合は、退職金が入るかどうか明確ではないので、財産分与の対象にならないケースが多いです。
財産分与の対象となっても、婚姻期間中で夫婦が同居した期間に見合う額だけが対象となります。
例えば、退職金1,000万円が支給された夫の勤務年数は40年で、婚姻期間が20年とします。
財産分与の対象となるのは、婚姻期間の20年間の部分だけです。
つまり、1,000万円÷40年(勤務年数)×20年(婚姻期間)=500万円が分与対象額となります。
この額を夫婦で決めた分与割合にて分け合います。
分与割合が2分の1とした場合、夫が750万円(2分の1の額である250万円+分与対象外500万円)、妻が250万円となります。
※退職金の財産分与の詳細は「退職金の財産分与のポイントをお教えします」で取り上げています。
離婚前に満期になっている生命保険金は、受取人がどちらか一方でも共有財産として対象になります。
中途解約して、解約返戻金を分け合うこともできます。
しかし加入していいる保険によっては、支払い保険料を大幅に下回ってしまうこともあります。
ですので、保険料を支払い中の生命保険については、離婚時の解約返戻金額を保険会社に照会を行い、その額を元に財産分与する方法が一般的です。
なお、掛け捨て型の生命保険は財産分与の対象となりません。
※生命保険の財産分与の詳細は「生命保険の財産分与で損をしない為に知っておくべきこと」で取り上げています。
専業主婦の妻が、夫の加入している厚生年金や共済年金から、婚姻期間に応じた分の2分の1を上限に分割譲渡してもらえる制度です。
基礎年金部分については分割の対象外です。
※年金分割の詳細については「離婚の年金分割をすれば、夫の年金の半分が貰えると思ってませんか?」で取り上げています。
財産分与はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も分与の対象になるものがあります。
たとえば次のような借金です。
これらは日常生活を過ごす為に必要な借金といえます。
分与方法は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて、残った額をお互いに分け合うことになります。
ただし、一方が世帯収入レベルに不相応な贅沢品を購入したことによる借金や、ギャンブルによる借金は財産分与の対象外。
つまり、当該借金をした本人だけに責任があるということです。
離婚調停や調停に代わる審判による、財産分与の取り決め状況をまとめたのが以下の表です。
(平成28年司法統計より)
婚姻期間 | 100万円以下 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 千万円以下 | 二千万円以下 | 二千万円超 |
2年未満 | 204 | 67 | 17 | 5 | 7 | 3 | 4 |
5年未満 | 453 | 174 | 115 | 24 | 26 | 16 | 1 |
5年以上 | 511 | 223 | 162 | 72 | 90 | 44 | 11 |
10年以上 | 343 | 175 | 170 | 91 | 122 | 63 | 30 |
15年以上 | 197 | 140 | 162 | 79 | 157 | 79 | 37 |
20年以上 | 121 | 86 | 126 | 98 | 133 | 100 | 50 |
25年以上 | 110 | 107 | 183 | 142 | 287 | 244 | 126 |
計 | 1939 | 972 | 935 | 511 | 822 | 549 | 259 |
割合 | 32.39% | 16.24% | 15.62% | 8.54% | 13.73% | 9.17% | 4.33% |
こちらを見ると財産分与の相場というか、傾向が分かってきます。
婚姻期間が長いほど、夫婦の協力によって築かれる財産は多くなるので、相対的に財産分与額も多くなります。
婚姻期間20年以上の夫婦のうち約27%が、1,000万円以上の財産分与額となっています。
一方婚姻期間が短い場合は、短期に多額の共有財産を築くのは基本的には難しい為、財産分与は少なくなっています。
婚姻期間5年未満の夫婦のうち約59%が、100万円以下の財産分与額となっています。
婚姻期間中に夫婦の協力で得た共有財産(実質的共有財産)を確定させ、全てをリストアップします。
次にそのリストに基づいて、共有財産の総額を割り出します。
その際、夫婦の借金も共有財産となるので、プラスの共有財産から夫婦の借金を引いた分が総額の対象になります。
総額を割り出したのなら、その共有財産の形成に係る夫婦の貢献度(寄与分)に応じて、お互いの分与割合を決めます。
相手が預貯金などの財産の開示を求めても、応じない場合があります。
そのような場合は、弁護士が行うことができる「弁護士照会制度」を利用することにより、相手の預貯金などが分かる場合があります。
協議の段階では分与割合については、夫婦で自由に取り決めることも出来ます。
ですが一般的な基準はあります。
家庭裁判所の審判や判決では、原則2分の1ずつに分け合う「2分の1」ルールが定着しています。
専業主婦でも財産分与の権利は当然にあることは、既にお伝えした通り。
問題は財産への貢献度がどれくらい認められるかです。
家庭裁判所は昔、専業主婦の財産分与の割合は、2分の1以下とする判断が大方でした。
しかし、近年では「2分の1」とする考え方が主流となっているので、専業主婦でも原則「2分の1」が分与割合の基準となります。
なかには専業主婦とは名ばかりで全く家事育児をしない人もいます。
その場合であっても「2分1」のとするのは妥当ではない為、割合を調整する必要があります。
※専業主婦と離婚に関しての詳細は「専業主婦が離婚しても安心して暮らしていける方法」で取り上げています。
分与割合が決まれば、その分与方法を決めます。
分与方法としては次のような方法が考えられます。
動産や株式などの財産は時期によって評価額が変動します。
その為、どの時点の評価で分与を行うかは重要なことです。
一般的に評価基準値は、離婚成立のときを基準とします。
しかし離婚前に別居していた場合は、夫婦の協力関係が終了した別居時の評価額を目安にすることもあります。
財産分与の取り決めが合意出来たのなら、それ通りに分与してもらう為の対策が必要。
最も避けるべきことは、財産分与の取り決めを「口約束」することです。
口約束は証拠が無い為、「そんな約束はしていない」と反故される可能性が十分あります。
最善の対策は、取り決め内容を「離婚公正証書」に残すことです。
離婚公正証書ならば、相手が財産分与の約束を破った場合、相手の財産に強制執行をかけて差し押さえ、そこから回収することが可能となります。
※離婚公正証書の詳細については「離婚協議書を公正証書にすることで効力は絶大となります」で取り上げています。
原則、現金や預貯金の財産分与は税金がかかりません。
しかし、不動産や株券などの財産分与をする際、財産を譲る名義人に「譲渡所得税」が課税されることがあります。
また不動産に関しては、不動産を受け取る側に「不動産取得税」「登録免許税」が課税されます。
話合いで合意が出来ない場合や、相手が話し合い自体に応じない場合は、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
離婚調停でも、合意ができなければ審判へ移行することもあります。
審判とは簡単に言うと、裁判所が財産分与について判断を下すことです。
なお離婚調停や審判でも財産分与について、話がまとまらない場合は離婚訴訟を提起します。
離婚裁判にて、離婚を求めると同時に、財産分与の問題解決を目指すことになります。
財産分与は離婚時に請求するのが通常です。
ただ夫の暴力が激しい場合や、子供の学校の関係上、財産分与の取り決めは後にして、先に離婚を成立させるようなケースもあります。
離婚後も財産分与の請求をすることは認められています。
しかし、いつまでも請求が可能なわけではありません。
離婚成立後2年以内に請求する必要があり、2年が過ぎると時効に掛かり、権利は消滅してしまいます。
また確かに2年間は請求可能とはいっても、時間が経つほど財産が消費したり、移動してしまう可能性は大です。
その結果、離婚時の財産が特定出来ず、財産分与の協議は困難となります。
ですので、離婚後に財産分与の請求するにしても、なるべく早急に行う必要があります。
なお、離婚後に二人の協議で合意できない場合は、「財産分与分担調停」を申し立てることになります。
財産分与に関する対策で一番重要なのは、夫婦の共有財産の正確な把握です。
夫婦にどれだけの共有財産があるのかを、しっかり把握しておかないと、不当な財産分与をされ大損する可能性があります。
というのは、財産分与は出来るだけしたくないと考える相手が、財産を隠してしまうことがよくあるからです。
たとえば、ため込んだ現金を金などに変えて、銀行の貸金庫に預けたり、多くの現金を自分の兄弟等などに預けたりして、本人しか分からない場所に隠すのです。
これをされると、その隠された財産を見つけることは難しくなります。
多くの財産を隠されていると家庭裁判所に訴えても、積極的な財産調査は行ってくれません。
仮に調査嘱託を行う場合でも、どこに財産が隠されているか見当もつかない場合は、調査命令は出さないでしょう。
つまり相手に痕跡を残さず財産を隠されたのなら、泣き寝入りするしかないのです。
ですので、夫婦の共有財産の特定はしっかり行うようにしましょう。
具体的には、預貯金であれば、次のことを控えるのは必須です。
相手の名義だと分かるように画像に残すのもいいでしょう。
また有価証券などの口座、保険なども見落としがちですので、これらもしっかり確認しなければなりません。
これらの確認は相手に気づかれないようにすることです。
相手が気づいてしまうと、すぐさま財産を隠されてしまう可能性が高いです。
財産をしっかり把握しておけば、その後に実際に財産を隠されたとしても、財産があったという証拠があれば何らかの対応が可能です。
とにかく離婚を考える段階、もしくは相手が離婚を考えている可能性がある段階なら、財産隠しをされないように先手を打つべきです。
具体的な方法は、離婚を専門とする弁護士に相談するのが一番安心です。
冒頭でも触れた通り、財産分与は共有財産があれば、基本的に請求出来る権利です。
子供を連れて離婚する母親が、これから先に多くの収入を得ることが出来る人はそう多くはありません。
ですので、経済的に余裕を持つ為にも、財産分与の権利行使や主張をするべきです。
また相手からの財産隠しをされないように、相手の財産の把握は必須です。
財産分与をしっかり確保する為にも、今回お伝えしたことを参考に対策して頂ければ幸いです。
それでは長くなりましたが、最後までご覧頂きありがとうございました。
まいみらいがお伝えしました。(私の離婚経緯などを載せたプロフィールはこちら)
あなたは弁護士を通して、離婚や財産分与、慰謝料請求を考えているが、次のような悩みや考えをお持ちではないでしょうか?
このような希望を満たしてくれる弁護士等を「無料」で探してもらえる案内所があります。
理想かつ離婚に強い弁護士をお探しの方は、詳細を下のオレンジ色のボタンからご覧ください。↓
スポンサーリンク
妻に浮気を許してもらうには?適切な行動を解説【償い・反省・誠意】
旦那の浮気を許すことを考え中なら失敗しない為に知っておくべき事
夫の浮気から夫婦再構築させる為に押さえるべき4つのポイント
旦那が嫌いで離婚したい!それを成功させる為の全手順をお教えします
【突然妻から離婚したいと言われたら】今すぐ確認すべき重大ポイントを解説
【妻が出て行った】離婚したくない方が別居中にすべきことを徹底解説
妻からの離婚請求を回避し、夫婦関係を修復させる為の確かな方法
未払い養育費を請求して全額回収!元夫の逃げ得を防ぐ手段を解説
養育費を継続的かつ確実に払わせる方法を徹底解説!
離婚のメリットとデメリットを徹底解説!間違いのない決断を導く