財産分与 退職金

シングルマザーによる離婚講座

離婚を専門に扱う某法務事務所に勤める1児のシングルマザーが、離婚に関する役立つ知識を発信します。

退職金の財産分与のポイントをお教えします


老後の主な収入源といえば、主に年金になりますが、年々その支給額は減る一方です。

 

よって、離婚時に退職金を財産分与に含めることが、出来るか否かは、とりわけ熟年離婚においては重大な問題です。

 

ということで今回は、退職金と財産分与についてのポイントなどを取り上げていきます。

 

熟年での離婚をお考えの方は、ぜひご覧ください。

 

※熟年離婚をお考えの方は、今回の記事と共に「熟年離婚を失敗し後悔をしない為に知っておくべき7つのこと」の記事も合わせてご覧ください。

 

 

 

財産分与をおさらい

はじめに財産分与について軽くおさらいをしておきましょう。

 

財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いてきた財産を、離婚に際して清算し、お互いの寄与度(貢献度)に沿って分け合うことです。

 

財産分与をする時は、離婚時の夫婦の財産を特定して、それを半分(50%ずつ)の割合で分けることが大半です。

 

財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻中に夫婦の協力により、築いたすべての共有財産です。

 

名義はどちらであろうと関係なく、二人の共有財産として扱われます。

 

主な共有財産の例は次の通りです。

 

  • 現金(給与)・預貯金
  • 不動産
  • 株などの有価証券
  • 保険金・・・などなど

 

なお、結婚前の預貯金や所有物、相続した財産などは「特有財産」といい、財産分与の対象外となります。

 

※財産分与の詳細については「離婚時の財産分与の全容とガッチリ確保する方法をお教えします」をご覧ください。

 

 

 

退職金も夫婦の共有財産となる

退職金は賃金の後払いという性格があります。

 

その為、退職金も現金(給与)と同じ様に財産分与の対象となる場合があります。

 

退職金も婚姻中に夫婦が協力し、築き上げた共有財産といえるからです。

 

退職金とは、主に夫が長年にわたり、職場労働に従事した結果の褒美の様なイメージだと思います。

 

とはいえ、夫が労働に集中できたのも、妻のサポートがあってこそです。

 

妻のサポートがなければ、家事や育児も夫が全てやらなければいけません。

 

その様な環境では、夫は仕事、家事育児と忙しすぎて、仕事に支障をきたし、それが原因で途中退職していたかもしれません。

 

ですので、当然ながら退職金も財産分与の対象となりえるのです。

 

 

 

退職金が分与対象となるケース

それでは、どの様なケースで財産分与の対象になるのかについて

 

  • 退職金が既に支給されている
  • 退職金支給前に離婚

 

この2つのケースに分けてお伝えします。

 

 

退職金が既に支給されている

夫または妻が退職をして、会社より退職金が払われてから離婚するケースについて、まずはお伝えします。

 

退職金は既に受け取っているので、当然ながら財産分与の対象となります。

 

なお、退職金の支給がされたのがかなり前で、離婚時には既にその退職金が残っていない。

 

こういった場合には、財産分与の対象となる財産がもはや無いので、財産分与の対象外となる可能性が高いです。

 

 

退職金支給前に離婚

次に、退職金支給前に離婚するケースについてです。

 

このケースでは、将来の退職時に受け取る退職金を、前もって財産分与ができるのかという問題があります。

 

判例では、この問題を次の様に判断しています。

 

将来の退職金は、近い将来に退職金を受給できる蓋然性が高い場合には、財産分与の対象となる(東京高判平10・3・18)

 

蓋然性とは「退職金が支払われる可能性が高い」と意味です。

 

では次に、退職金が支払われる可能性が高い状況とは、どういった状況であるかお伝えします。

 

 

 

退職金が支給される可能性が高い状況

退職金が支給される可能性が高い状況とは、主に次の2つのことを重要視されます。

 

  • 退職までの残り期間が短い
  • 退職金支給の可能性が高い勤務先である

 

では個別に見てみましょう。

 

 

退職までの残り期間が短い

退職時期があまりにも先だと、実際に退職金が受け取れるかどうかがあやふやなので、財産分与の対象にはできません。

 

多くの場合「10年以内」に退職するかどうかで評価します。

 

10年以内に退職予定なら、財産分与に含めます。

 

判例でも、10年以上先の退職予定の場合には、退職金は財産分与の対象外にすることがほとんどです。

 

 

退職金支給の可能性が高い勤務先である

勤務先がどのような状況かも大きなポイントです。

 

会社規模が大きく、経営状況も問題なく、退職金規程が就労規則などで明記されている。

 

この様な勤務先なら、退職金が得られる可能性が高いので、退職金を財産分与の対象に含めることができます。

 

特に公務員の場合は、これらがしっかりしている為、退職金を分与対象に含めやすいです。

 

一方、中小企業や経営状況が不安定、退職金規定がない勤務先だと、退職金を財産分与の対象に含めるのは困難な場合が多いです。

 

 

 

退職金の財産分与の計算

退職金を財産分与の対象にした場合の計算方法についてお伝えします。

 

ここでも次の2つのケースで、計算方法などが変わってきます。

 

  • 退職金が既に支給されている
  • 退職金支給前に離婚

 

それでは別々に見てみます。

 

 

退職金が既に支給されている

財産分与の対象となるのは、退職金以外の共有財産と同じく「婚姻期間に対応する部分だけ」です。

 

それを前提として、退職金の財産分与の計算式は、基本的には次の通りとなります。

 

 

財産分与対象額=退職金÷勤務年数×婚姻期間

 

それでは例を出して計算してみましょう。

 

夫の退職金:1800万円

勤務年数:40年

婚姻期間:25年

妻:専業主婦

 

【財産分与対象額】

1800万円÷40年×25年=1125万円

 

財産分与の分与割合を「50%」ずつだとすると、妻は562.5万円を退職金からの分与として受け取ることが出来ます。

 

 

退職金支給前に離婚

退職金支給前の計算方法の考え方は何通りかありますが、ここでは離婚時分与説についてお伝えします。

 

将来の退職金ははっきりしません。

 

その為、別居時または離婚時に退職した場合の退職金を、財産分与の対象とします。

 

それを勤務期間と婚姻期間で按分する方法を採られることが多くあります。

 

この方法を採るには、夫の勤務先から退職規定が載った就業規則などの書類を、提出してもらう必要があります。

 

それでは例を出して計算してみましょう。

計算式は先ほどと同じです。

 

別居・離婚時:50歳

夫50歳時点の退職金額:1200万円

夫50歳の時点の勤務年数:30年

婚姻期間:20年

 

【財産分与対象額】

1200万円÷30年×20年=800万円

 

財産分与の分与割合を「50%」ずつだとすると、妻は400万円を退職金からの分与として受け取ることが出来ます。

 

 

 

退職金の財産分与の請求方法

実際に、どの様に退職金の財産分与を請求していくか?についてお伝えします。

 

基本的には、退職金以外の預貯金や不動産などの財産分与と同様に、まずは夫婦の話し合いで決めていきます。

 

その際は、先ほどお伝えした計算方法をベースにしましょう。

 

場合によっては、夫婦の合意を前提に、自由に金額や支払い方法を決めることも可能です。

 

話し合いの末、合意に至れば、その合意内容を証拠に残す為、必ず「離婚公正証書」などの書面を作成するようにしましょう。

 

※離婚公正証書についての詳細は「離婚協議書を公正証書にすることで効力は絶大となります」をご覧ください。

 

 

夫婦の話し合いで解決できない場合

退職金の財産分与について夫婦間で合意できない場合は、調停での解決を目指すことになります。

 

調停とは、端的に言うと、裁判所内の中立的な第三者が、夫婦の間に入って行われる話合いです。

 

その中立的な第三者がときには、夫婦に問題解決のためのアドバイスや、解決案を提示するなどして、夫婦が合意できるように導きます。

 

離婚前であれば、離婚調停の申し立てを行い、離婚請求と合わせて話し合いをします。

 

離婚後であれば、財産分与調停の申し立てを行い、その場で話し合いをします。

 

調停でもなお合意できない場合は、最終的に離婚訴訟を提起して解決を目指します。

 

※離婚調停についての詳細は「もし協議離婚が決裂したなら、調停離婚を目指すことになります」をご覧ください。

 

 

 

退職金の財産分与の受け取り時期

既に退職金が支給済なら、財産分与の受け取り時期は、離婚時にすればいいだけなので難しくはないでしょう。

 

問題は、将来の退職金についてです。

 

退職金は場合によっては数千万円ということもあります。

 

まだ支給されていない退職金を、離婚時に分与するとなると、支払う側の負担が大きすぎます。

 

退職金以外の財産が多くあれば、離婚時に支払えますが、現実問題その様な人は稀でしょう。

 

そこで実際に、退職金が支給されたタイミングで、相手へ支払う方法が採られていることが、判例上でもよくあります

 

しかし、この方法は受け取る側とすれば、大きなリスクがあります。

 

たとえば、相手に知らせないまま定年前に退職して、その間に退職金を全て使い込んでしまう。といったこともあり得ます。

 

よって話し合いでは、可能な限り離婚時に全部、またはより満額に近い額を支払ってもらえるように交渉しましょう。

 

 

 

「退職金の財産分与のポイントをお教えします」まとめ

今回は退職金と財産分与について取り上げました。

 

婚姻中にずっと専業主婦だった方は、自分の年金だけだと、老後は到底生活できません。

 

ですので、年金分割を請求することはもちろん。

 

退職金に関しても、この記事を参考にするなどして、しっかりと請求して確保するようにしてください。

 

 

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