離婚を専門に扱う某法務事務所に勤める1児のシングルマザーが、離婚に関する役立つ知識を発信します。
シングルマザーにとって養育費は離婚後に生活していく上において、欠かす事ができないお金ですよね。
このお金を受け取れるか受取れないかで、経済的な面はもちろん、精神面でも大きく違ってきます。
離婚したとはいえ、子供の父親には変わりはなく、親が未成熟の子を扶養する義務は当然に続きます。
しかし、現実は・・・
「養育費を支払ってくれる約束をしていたけど、数カ月で支払いが止まった」
「再婚するので、もう養育費は払わないから」…など
このように、多く父親が養育費を払わないという事態が起きています。
そこで今回は養育費を払わない父親に対し、どうすれば養育費を受け取ることができるのかについて取り上げます。
主には離婚時に既に払わないと言っている場合と、離婚後に養育費が止まった場合の2つです。
この記事を読めば、養育費を払わないと拒絶している夫から、養育費の支払いを受けられる可能性は大きく上がりますよ。
なお、ここでは多数派である「養育費支払い義務者=父親」という設定でお伝えさせて頂きます。
目次
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父親から養育費を一度も受け取ったことがない母子家庭は一体どれくらいでしょうか?。
厚生労働省の平成28年全国ひとり親世帯など調査結果に、その割合が載っていました。
その数値は「56%」です。
血の繋がった自分の子供に対して、たった一度も養育費を払わないという父親が、半分以上いるのはちょっと信じられません。
以前と比べ、若干数字が上がってきたとはいえ、4分の1にも満たない数値です。
この数値を劇的に上げようと思えば、アメリカみたいにペナルティや罰則規定を強化する必要があると思います。
「実の子供に養育費を払わない親を逮捕してほしい!」と思う方もいるかもしれません。
結論から言うと、逮捕も出来なければ罰金を科すこともできません。
なぜなら養育費の不払いは犯罪ではないからです。
刑罰を与えるには、予め法律により、どの様な行為が犯罪になるか、そしてその犯罪にはどの刑罰が科されるか、ということが決められていることが必要だからです。
養育費の不払いは、民法上の債務不履行というだけなのです。
納得いかないですが、これが現在の日本の制度です。
お伝えした通り、多くの父親が養育費の支払いをしていないのが現状ですが、法的に養育費は払わないは通用するのでしょうか?
その前にまずは基本から確認しましょう。
養育費とは、食費、被服費、教育費、医療費などの子供を育てていく為に必要な全ての費用のことをいいます。
その養育費ですが、離婚時の話し合いで次の様な言い争いが起こることがあります。
「そっちが子供を引き取るなら、養育費は払わないぞ!」
「養育費を払わないってそれでも父親なの?」
親には子供が自立するまで扶養する義務があり、離婚して親権者(監護者)でなくなってしまっても、この扶養義務は変わりません。
ですので、離婚後に子供と離れて暮らす側の親でも、子供の扶養義務を果たす為、養育費支払いの義務があり、当然に分担しなければなりません。
親には、子供に対しては、「生活保持義務」があります。(民法820条)
「生活保持義務」とは、親は未成年の子供に対して、自分の生活水準と同等の生活を保障することを義務付けていることです。
ですので「自身に余裕がある範囲で、子供に最低限度の生活をさせればよい」というものでありません。
生活保持義務は、例えでよく「一個のパンでも共に分けあって、与えなければならないもの」と言われています。
たとえ養育費を払う側が経済的に苦しい場合でも、自分の生活費を削ってでも支払わないといけません。
親が失業状態で多額の借金があり、経済的に余裕が無かったとしてもです。
それでは、養育費の支払いを全額免れるためにはどのような状況が必要でしょう。
答えは、誰から見ても、それはかなり厳しいだろうと認められる現状が必要とします。
参考になる裁判例があります。(大阪高裁平成16年4月決定)
しかし離婚後に仕事を退職し、就職活動をするも見つからず、失業保険の受給中である。
また住宅ローンや離婚解決金などの借金が約1000万円あり、月々10万円の返済金は父親の両親に借りている状況であった。
なお「離婚解決金」とは財産分与、慰謝料などをまとめたものを指すこと多いです。
そこで父親は無職で収入が無く、生活が困窮しているから養育費を支払えないと家庭裁判所に陳述しました。
家庭裁判所はこれを受け入れて、母親が子供3人分の養育費を一人当たり月額3万円求める申し立てを却下しました。
母親はこの決定が不満で、高等裁判所に抗告しました。
高等裁判所の判断は、親の子に対する扶養義務は生活保持義務である。
よって養育費支払い義務者が、多額の借金をしていたとしても、自らの生活が維持できている。
そのうえ借金の返済が出来ている以上は、子供の扶養義務を免れるものではない。
多額の負債を抱えていることは、考慮するべき事情の一つである。
しかしその返済をするために、経済的余裕がないからといって、すぐに養育費の支払い義務を免れるものではないとしました。
養育費を支払う側とすれば、かなり厳しい裁判例であります。
結局、養育費を免れるには、生活保護を受けている、病気になり長い間働けないなどの、どうしようもない状況が必要です。
以上のように、裁判所は親の子を養育する義務を厳しく捉えていますので、相手の養育費を払わない勝手な言い分は通用しません。
会社の経営を失敗して借金が返せなくなったり、住宅ローンなどが払えなくなった場合などは、自己破産することが可能です。
通常、裁判所に破産が認められれば、このような借金などの支払い義務は免れます。
離婚時に取り決めた分割払いの慰謝料についても同様です。
しかし、養育費はお伝えした通り生活保持義務なので、どれだけ経済的に厳しくなっても、破産手続きをすることはできません。(非債務債権)
よって、原則的には滞納から逃れる事はできないので、全て支払う必要があります。
夫婦で養育費について話し合いの結果、支払いの合意を取り付けたとしても、それを口約束で終わらせてはいけません。
口約束では何も証拠はありませんので、相手から養育費が払われることありません、払われてもすぐに滞る可能性が大です。
継続的に養育費を受け取る為には必ず書面に残し、証拠を残さなければなりません。
養育費不払いの最善の対策は「離婚公正証書」を作成することです。
離婚公正証書があれば、いざ養育費が滞った時は「強制執行」が可能となります。
強制執行とは、裁判所の力で相手の財産を強制的に差し押さえ、その財産から滞った養育費を回収できることです。
具体的には、養育費の支払い義務者が給与取得者であれば、強制執行の主な対象は給与です。
その給与からどれくらい差し押さえられるかというと、税金や社会保険料等を差し引いた額の2分の1までが対象となります。
なお離婚慰謝料の差し押さえは4分の1まで限度です。
※ 離婚公正証書についての詳細は「 離婚協議書を公正証書にすることで効力は絶大となります」で取り上げています。
実際に強制執行を行うとなれば、元夫の勤務先や預貯金の口座を特定することが必要です。
しかし強制執行を逃れる為、元夫がわざと転職をしたり、預貯金を別の口座に移し替えたりすること多くありました。
その為、元夫の給与や預貯金などを差し押さえができず、滞納している養育費を回収できない事態が多発。
そこで令和2年4月1日施行の改正民事執行法により、次のような改正や対策強化がされました。
特に「第三者からの情報取得手続きの創設」は、強制執行逃れに大きな効果が期待できます。
内容としては、市町村などに対して、元夫の勤務先や預貯金などの情報提供を求めることが可能になりました。
これらの情報が分かれば、給与や預貯金を差し押さえることができるようになるので、非常に有効的な手続きです。
ここでお伝えしてきた内容を夫に伝えてもなお、養育費の支払いを拒否してくる場合は「離婚調停」を申し立てましょう。
離婚調停は、離婚そのものや、養育費などの離婚条件について話し合いをしてきたが、もはや合意は望めない場合に利用します。
離婚調停も、夫婦の協議によって問題の解決を目指すという点は、協議離婚と一緒です。
違う点は、話し合いの場所が家庭裁判所である事と、裁判官や調停委員が関与することです。
実際の調停の場では、基本的に夫婦が直接に話し合うのではなく、中立的な立場をとる調停委員が夫婦の間に入ります。
夫が離婚調停の場でも養育費支払いを拒否する場合は、調停委員から養育費を払うように説得がなされるでしょう。
なお、離婚調停は誰でも利用できるように、制度や手続きが簡易化されているので、個人でも十分に対応できるようになっています。
※ 離婚調停の詳細は「協議離婚ができない場合の次のステップ離婚調停を分かり易く解説」で取り上げています
養育費の取り決めをしたが、実際に父親が養育費の支払いから逃げている場合の対処法についてお伝えします。
養育費の取り決めは、次のような形式でなされたことが考えられますが、その形式により対処法が変わってきます。
それではこれらの対処法について取り上げます。
口約束の場合は、養育費の具体的な合意がない状態と見られます。
ですので合意をしっかり形として残す為に、離婚公正証書等の作成を求めることも考えられますが、約束を反故している相手が応じることは基本的にないでしょう。
ですので養育費を求める調停を申し立てることです。
養育費は過去に遡っての請求は認められず、基本的に請求時から認められる扱いが多いので、早急に申し立てを行うべきです。
養育費の調停では、中立的第三者である調停委員が当事者の間に入り、養育費について話し合います。
結果、合意できれば「調停調書」が作成されますが、それがあるとその後の養育費に不払いがあると強制執行が可能となります。
合意できない場合は調停不成立となり審判に移行します。
その審判書もその後の養育費に不払いがあると強制執行が可能となります。
離婚協議書などの私文書で養育費を取り決めている場合は、まずは次のような方法で催促してみましょう。
この場合「早急に支払うこと」ではなく「〇〇日まで」とハッキリと期限をつけて請求することです。
上記の方法でも相手が払わない場合は、「内容証明郵便」で請求しましょう。
内容証明郵便は法律行為としての通告などによく利用するもので、一般人は通常受け取ることのない特殊な郵便物です。
郵便物の文章の終りのほうには「養育費の支払いがなされない場合は、当然ながら法的な続きを取ります」等の内容を通常入れます。
このような郵便物を受け取った相手は、かなりインパクトがあり、心理的なプレッシャーが強く掛かります。
そのことから支払いに応じることもよくあります。
内容証明郵便を送ってもなお相手が払わない場合は、先ほどお伝えした養育費を求める調停を申し立てることになります。
なお、養育費の取り決めを私文書で取り決めている方は、養育費の回収の1つの手段として「養育費安心サポートなら滞っている養育費が手続だけで半額もらえる!」もご確認ください。
公正証書を作成している時も、基本的に私文書の場合と同じ段階を踏むようにしましょう。
相手はそのような方法に対しておそらく憤慨することでしょう。(そもそも養育費を払っていない方が悪いのは確かですが・・・)
このことを逆恨みして、強制執行後の養育費も素直に払わなくなる可能性があります。
また実際に強制執行をした時の懸念点もあります。
強制執行する財産は、相手の給与から差押えすることが多く、その際は裁判所から相手の会社に給与差し押さえ命令の通知が届きます。
その通知を見た会社からは「アイツは裁判所にお世話になるようなとんでもない奴だ」等と思われ、相手の社内の評判が悪くなります。
クビにされることは稀ですが、評判が悪くなったことで、相手が会社に居づらくなり退職してしまうことは珍しくありません。
仕事を失って無収入なり、大した財産もなければ養育費の支払いは期待できませんし、再び強制執行しても空振りに終わります。
このようなリスクがありますので、最初から強制執行をするのではなく、まずは内容証明郵便などで請求するのが無難です。
これらの書類をお持ちの方は、次の段階を踏むことが考えられます。
この場合も、最初から強制執行することが望ましくないのは先ほどと同じです。
この命令に正当な理由なく従わない場合は、10万円以下の過料に処することができます。
これらは直接裁判所が関与してくる為、養育費の支払いに応じることも多く効果的です。
最初から履行勧告の申し立てをすることも可能です。
「いきなり裁判所の制度を利用するのは気が引ける・・・」
という方は、始めは内容証明郵便で請求してみて、それでも応じない場合は、履行勧告の手続きを踏むのがいいでしょう。
滞っている養育費を請求しようにも、相手の住所が分からないケースもあります。
その時は相手方の「住民票」や「戸籍の附票」、「住民票の除票」を閲覧することにより、相手の現住所を見つけることが可能です。
これらの書類は個人情報保護法により、役所は原則的には交付してくれません。
しかし、子供の養育費を請求する為という正当な理由があれば、交付してもらえる場合があります。
子供の父親が再婚し、その再婚相手との間に子供が生まれたことを機に養育費を払わないと伝えてくるケースは多いです。
父親の扶養人数が増えたことで生活費などが増加するのは避けられません。
だからといって、前妻との間の子供に対する扶養義務がなくなるわけでは当然ありません。
よって父親が再婚したことを理由に、養育費を払わないという主張は通りません。
子供の親権者である母親側とすれば当然ですよね。
もし私が元夫からそのような理由で養育費を払わないと言ってきたら、絶対に許せません。
だって再婚は相手の意思でできるわけだし、するなら当然今まで通りに養育費を払えることを前提にすると思うからです。
だだし・・・父親の養育費支払い義務は無くなりませんが、父親は再婚相手とその間の子供に対しても扶養義務が発生します。
もし父親が全ての扶養義務者を養える経済力がない場合は、「事情の変更」が生じたとして、養育費の減額請求が可能となります。
実際に父親が前妻である子供の母親に減額を求めてきた場合、いくらの減額に応じるかは話し合いで決めます。
話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停に進むことになります。
今回は養育費を払わない父親に対して、どうすれば養育費を払わすことが出来るかについて取り上げました。
子供と離れて暮らす側の親には、当然に養育費を支払わなければならない「生活保持義務」があります。
ですので「養育費を払わない」という言い分は到底認められません。
離婚に責任がない子供に不自由な思いをさせない為にも、しっかりと養育費を請求して確保しましょう。
それでは長くなりましたが、最後までご覧頂きましてありがとうございました。
まいみらいがお伝えしました。(私の離婚経緯などを載せたプロフィールはこちら)
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